1. シリーズの説明と今回のテーマ
日本の職場では、上司とのコミュニケーションがとても大切です。
しかし、日本語で上司に話しかけるのは、少し緊張しますよね。
今回のテーマは、今後のキャリアや配属についてライトに相談するときの日本語です。
2. 場面のイメージ:元留学生アンさんの場合
元留学生のアンさんは、日本の会社で入社3年目の社員です。
現在は国内向けの事務を担当していますが、将来的には海外のお客様とも仕事をしたいと考えています。
今日は、「今の仕事+少しチャレンジ」という形で、
佐藤部長にキャリアの相談をしてみることにしました。
3. 会話モデル:佐藤部長にキャリアを相談する
登場人物:
アンさん(部下・元留学生)
佐藤部長(上司)
① 相談を切り出す
アン:
「佐藤部長、今、お時間よろしいでしょうか。」
佐藤部長:
「はい、大丈夫ですよ。どうしましたか。」
アン:
「今後のキャリアについて、少しご相談したいことがあります。」
② 自分の現状と考えていることを伝える
アン:
「現在は、主に国内のお客様向けの事務を担当していますが、
将来的には、海外のお客様とのやり取りにも、もっと関わりたいと考えています。」
佐藤部長:
「なるほど。海外との業務に興味があるんですね。」
アン:
「はい。前の職場でも、少し海外とのメール対応をしていたので、
その経験も生かせればと思っています。」
③ 具体的なお願いをして、上司の考えを聞く
アン:
「もし可能であれば、今の仕事を続けながら、
少しずつ海外案件にも関わるチャンスをいただくことはできますでしょうか。」
佐藤部長:
「そうですね。ちょうど、英語での問い合わせが増えてきているので、
アンさんに一部お願いすることはできると思います。」
アン:
「本当ですか。ありがとうございます。」
④ 次のステップを確認する
佐藤部長:
「まずは、来月から◯◯プロジェクトのメール対応の一部を、
アンさんに担当してもらいましょう。
その様子を見ながら、少しずつ業務の範囲を広げていく形でどうですか。」
アン:
「はい、ぜひお願いいたします。
足りない点があれば、アドバイスをいただけると助かります。」
佐藤部長:
「もちろんです。必要な資料や過去のメールも共有しますね。」
⑤ しめの一言
アン:
「お時間をいただき、ありがとうございました。
いただいたチャンスを生かして、頑張ります。」
佐藤部長:
「こちらこそ、相談してくれてありがとう。期待しています。」
4. 会話の流れを整理してみましょう
この会話は、次のような流れになっています。
- 相談したいテーマを一言で伝える
「今後のキャリアについて、少しご相談したいことがあります。」 - 今の仕事と、やりたい方向性をセットで説明する
「現在は◯◯を担当していますが、将来的には△△にも関わりたいと考えています。」 - 具体的なお願いや質問をする
「今の仕事を続けながら、△△にも関わるチャンスをいただくことはできますでしょうか。」 - 上司の提案に前向きに応える+フォローをお願いする
「ぜひお願いいたします。足りない点があれば、アドバイスをいただけると助かります。」 - お礼と意欲でしめる
「お時間をいただき、ありがとうございました。頑張ります。」
5. キーフレーズ集:ライトなキャリア相談で使える言い方
相談を切り出すとき
- 「今、お時間よろしいでしょうか。」
- 「今後のキャリアについて、少しご相談したいことがあります。」
現状と興味を伝えるとき
- 「現在は◯◯を担当していますが、将来的には△△にも関わりたいと考えています。」
- 「以前から、□□の分野に興味がありまして。」
具体的なお願いをするとき
- 「もし可能であれば、今の仕事を続けながら、△△にも少しずつ関わることはできますでしょうか。」
- 「◯◯の業務に関わるために、今から準備しておいたほうがよいことはありますでしょうか。」
しめの一言
- 「お時間をいただき、ありがとうございました。」
- 「いただいたアドバイスを生かして、頑張ります。」
6. ミニ解説:日本の職場での「ライトなキャリア相談」のポイント
① 「今の仕事+少しチャレンジ」で話す
日本の職場では、
「今の仕事はきちんと続ける」ことを前提にしながら、
「その上で、新しいことにもチャレンジしたい」と伝えるほうが、上司もイメージしやすくなります。
例:
- ❌「今の仕事はもうやりたくありません。」
- ⭕「今の仕事を続けながら、海外のお客様とのやり取りにも少しずつ関わってみたいと考えています。」
「今の仕事」も大事にしていることを先に言うと、相談が受け入れられやすくなります。
② 自分の考え+質問をセットで伝える
上司としては、「本人がどう考えているか」を知りたいことが多いです。
何も考えを言わずに「どうしたらいいですか?」と聞くより、
自分の案を簡単に示してから質問するほうが、話が具体的になります。
例:
- ❌「キャリアについて悩んでいるのですが、どうしたらいいですか。」
- ⭕「将来的には◯◯のような仕事に関わりたいと考えていますが、
そのために、今の部署でできることはありますでしょうか。」
「こうしたい」+「そのために何をすればよいか」という形を意識するとよいでしょう。
③ 相談のタイミングと、時間の長さに配慮する
相談するときは、まず「今、話してよいかどうか」をシンプルに確認します。
「お忙しいところ〜」よりも、時間だけをたずねる言い方のほうが、建前感が少ない場面も多いです。
- 「今、お時間よろしいでしょうか。」
- 「今、10分ほどお時間よろしいですが。キャリアについて少しご相談したいことがあります。」
また、その場ではなく、あとで時間を決める言い方もよく使われます。
- 「今後のキャリアについて、10分ほどご相談したいことがあります。
今日どこかで、お時間よろしいですが。」
このように、
- 「今か、あとでか」
- 「どれくらいの時間か」
を一緒に伝えると、上司も予定を立てやすく、相談もスムーズになります。
7. まとめ:まずは自分の「一言」を用意してみる
上司とのキャリア相談は、「一度で完璧」にする必要はありません。
今回のアンさんのように、
- 今やっている仕事
- これからやってみたい方向
- 上司に聞きたいこと
を1〜2文ずつ準備しておくだけでも、話しかけるときの不安が少し軽くなります。
気になったフレーズがあれば、まずはひとつだけでも使ってみてください。
少しずつ「自分らしい日本語」で、上司とキャリアの話ができるようになっていけば十分です。

