相手を動かすビジネスメールの組み立て方

「メールを送ったのに、返信が来ない」
「何をしてほしいのか、聞き返されてしまった」

仕事で日本語を使っていると、このようなことは少なくありません。

たとえば、上司や取引先に資料確認をお願いするときです。文法として大きな間違いがなくても、依頼の意図がうまく伝わらないことがあります。原因は、日本語が不正確だからではなく、メール本文の組み立て方にあることが多いです。

ビジネスメールでは、丁寧に書くことも大切です。しかし、それ以上に重要なのは、相手がすぐに内容を理解し、動ける形で書くことです。

1. うまくいかない例

お疲れ様です。
先日の会議で話題に出た件ですが、いろいろと検討した結果、資料をまとめました。添付しますので、お時間のあるときにご確認ください。あと、来週の予定もご相談したいのですが、またご連絡します。よろしくお願いします。

このメールは、失礼な表現ではありません。ただ、読み手にとっては整理しにくい構成です。

  • 資料を確認してほしいのか。
  • 来週の予定調整が主な目的なのか。
  • いつまでに対応すればよいのか。

大事な情報が同じように並んでいるため、何を先に見ればよいのかがわかりにくくなります。

2. 伝わりにくくなる理由

距離

ビジネスメールでは、相手との距離が遠いほど、丁寧さに意識が向きやすくなります。そのため、前置きや背景説明が長くなることがあります。

しかし、距離がある相手ほど、最初に必要なのは長い説明ではありません。このメールは何のためのものかがすぐにわかることの方が重要です。

特に仕事のメールでは、相手は忙しい中で内容を判断しています。冒頭で目的が見えないメールは、それだけで読みにくくなります。距離に配慮するとは、ことばをやわらかくすることだけではなく、相手の負担を減らす構成にすることでもあります。

立場

仕事のメールでは、「誰が何をしたのか」と「相手に何をしてほしいのか」を分けて書く必要があります。ここが曖昧だと、こちらの報告なのか、相手への依頼なのか、共有だけでよいのかがわかりにくくなります。

特に、上司や取引先のように判断や承認をする相手に対しては、メールの中で役割が整理されていないと、相手が動きにくくなります。

書き手は、自分が準備したことを先に説明したくなりがちです。しかし、読み手が知りたいのは、まずこのメールで自分に何が求められているかです。

目的

メールは単なる連絡手段ではありません。仕事のメールは、確認してもらう、返答してもらう、承認してもらうなど、何らかの行動につなげるためのものです。

ところが、目的がはっきりしないまま書くと、背景説明や状況共有が中心になり、何をしてほしいのかが見えにくくなります。そのため、本文は書き手の順番ではなく、読み手が理解しやすい順番で並べる必要があります。

基本は、次の流れです。
主旨 → 背景 → 自分の対応 → 相手への依頼

依頼の伝え方

依頼には強さがあります。たとえば、以下の表現は同じ確認依頼でも伝わり方が違います。

  • 「ご確認ください」
  • 「お時間のあるときにご確認ください」
  • 「〇日までにご確認いただけますと幸いです」

言い方が弱すぎると、相手は急ぎの依頼だと判断できません。反対に、強すぎると、相手との関係によっては一方的な印象になります。大切なのは、依頼の内容は明確にしながら、表現はやわらかく整えることです。内容は具体的に、言い方はやわらかくが基本です。

3. 言い換えの例

メール本文は、次の4つの流れで考えると整理しやすくなります。

① 主旨を先に置く

マーケティング資料の初稿について、ご確認をお願いいたします。

「資料ができたので送ります」よりも、何について、どのような対応を求めているかが明確になります。

② 背景を短く添える

先週のチームミーティングでの決定に基づき、資料を作成いたしました。

背景は、読み手が状況を思い出せる程度の長さで十分です。

③ 自分の対応を明示する

資料のPDFを本メールに添付しております。

準備がどこまで進んでいるかを示すことで、相手も次の行動に移りやすくなります。

④ 相手への依頼を具体化する

お手数ですが、〇月〇日(金)までにご確認のうえ、ご意見をいただけますと幸いです。

「何を」「いつまでに」してほしいのかを具体的にします。「よろしくお願いします」だけで終えると、優先度は伝わりません。

4. まとめ

ビジネスメールは、丁寧な文章を書くことより、相手が理解しやすく、動きやすい順番で組み立てることが重要です。

主旨、背景、自分の対応、相手への依頼の4つに分けて整理すると、伝わるだけでなく、仕事が進みやすいメールになります。

 

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門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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