会議で話に入れないとき、見直したいのは「内容」より「入り方」

プロジェクトの進捗会議で、議論が速いテンポで進んでいる。自分には確認したい点や、少し気になる点がある。けれども、どのタイミングで話せばよいのか分からない。少し待っているうちに、話題は次の項目へ移ってしまう。

反対に、思い切って話し始めたところ、発言が急に入ったように受け取られ、会議の流れが止まってしまうこともある。

このような場面では、日本語力そのものよりも、会議で発言するときの「入り方」が合っていない可能性があります。

会議では、内容が正しいかどうかだけでなく、どのタイミングで、どの表現を使って、どの強さで入るかが大切になります。

1. 発言したいのに、うまく入れない例

たとえば、次のような言い方です。

ちょっといいですか。その案はコストがかかりすぎます。

内容としては必要な指摘かもしれません。しかし、この言い方では、議論の流れを急に止めたように聞こえたり、相手の案を正面から否定したように受け取られたりすることがあります。

一方で、次のように弱く入りすぎる場合もあります。

あの、一言だけ……

この場合、発言したい意思は見えますが、何について話すのかが分かりにくく、会議の中で拾われにくくなることがあります。

会議で難しいのは、意見を持つことだけではありません。その意見を、どのような入り方で出すかも重要です。

2. 会議では、意見の前に「入り方」が見られる

日本語の会議では、意見を述べる前に、まず発言の入口を整える必要があります。

ここでいう入口とは、長い前置きのことではありません。これから何を話すのかを、聞き手に分かるように示す短い表現のことです。

たとえば、次のような表現です。

一点、確認させてください。
少し補足してもよろしいでしょうか。
懸念点を一つ申し上げてもよろしいでしょうか。

このような表現があると、聞き手は「これから確認があるのだな」「補足が入るのだな」「反対ではなく、懸念点を示すのだな」と理解しやすくなります。

反対に、目的が分からないまま話し始めると、聞き手は発言の意図を考えながら聞くことになります。そのため、内容そのものよりも、入り方の強さや急な印象が目立ってしまうことがあります。

3. 入り方を整える4つの視点

会議で発言に入るときは、次の4つを意識すると整理しやすくなります。

① 距離

社内会議であっても、すべてが日常会話と同じではありません。役職者が同席している場合や、複数の部署が参加している場合は、発言の距離感を少し整える必要があります。

たとえば、いきなり意見を言うよりも、次のように入ることで、会議の場に合った発言として受け取られやすくなります。

一点、確認させてください。

これは遠慮しすぎているのではなく、発言を始める合図です。

② 立場

自分が進行役なのか、担当者なのか、参加者なのかによって、自然な入り方は変わります。

たとえば、目上の人や進行役の発言に続けて話す場合は、一度その内容を受けてから入ると、強く割り込んだ印象になりにくくなります。

今の点に関連して、一つ確認させてください。
ご説明いただいた内容に関連して、補足があります。

このように入ると、自分の発言が前の発言とどう関係しているのかが分かりやすくなります。

③ 目的

発言の目的を先に示すことも大切です。

確認したいのか、補足したいのか、懸念を伝えたいのか。それが分からないまま話し始めると、聞き手は「反対意見なのか」「質問なのか」「話題を変えたいのか」と考えながら聞くことになります。

たとえば、確認であれば、次のように入ることができます。

一点、確認させてください。

補足であれば、次のように入ることができます。

少し補足してもよろしいでしょうか。

懸念であれば、次のように入ることができます。

懸念点を一つ共有してもよろしいでしょうか。

このように目的を先に出すと、発言の受け止められ方が安定します。

④ 強さ

同じ内容でも、入り方によって強さが変わります。

たとえば、次のように言うと、かなり直接的に聞こえます。

その案はコストがかかりすぎます。

一方で、次のように入ると、指摘の内容は残しながら、会議の流れに合わせやすくなります。

コスト面で一点、確認させてください。
この案について、費用面で少し懸念があります。

会議では、強く言うことが必要な場面もあります。ただし、毎回強く入ると、内容よりも言い方の印象が目立つことがあります。

発言の目的に合わせて、強さを調整することが必要です。

4. 場面に合わせた入り方の例

会議で使いやすい入り方を、場面ごとに整理します。

確認したいとき

一点、確認させてください。
〇〇について、確認してもよろしいでしょうか。
今の点について、もう少し確認したいです。

確認の場合は、反対意見ではないことが分かるように入ると、相手も答えやすくなります。

補足したいとき

少し補足してもよろしいでしょうか。
関連して、一点補足があります。
先ほどの内容に加えて、〇〇も共有します。

補足の場合は、前の発言とのつながりを示すと、会議の流れを止めにくくなります。

懸念を伝えたいとき

懸念点を一つ共有してもよろしいでしょうか。
費用面で少し気になる点があります。
実施時期について、一点確認したい点があります。

懸念を伝えるときは、いきなり否定するよりも、どの観点の話なのかを先に示すと伝わりやすくなります。

反対意見を述べたいとき

方向性は理解しました。そのうえで、一点気になる点があります。
ご提案の意図は分かりますが、〇〇の点は再検討が必要だと思います。
私は少し別の見方をしています。理由は〇〇です。

反対意見の場合は、最初に相手の話を受け止める表現を入れると、意見の対立だけが強く見えにくくなります。

話題を戻したいとき

先ほどの〇〇の件に戻ってもよろしいでしょうか。
少し前の議題に戻りますが、〇〇について確認があります。
先ほどの点で、一つ確認しきれていないことがあります。

話題を戻すときは、何の話に戻るのかをはっきり示すことが大切です。

5. まとめ

会議での発言は、言葉の正しさだけでは決まりません。同じ意見でも、入り方によって受け取られ方は変わります。

大切なのは、発言の前に、距離・立場・目的・強さを整えることです。「何を言うか」だけでなく、「どのように会議に入るか」を考えることで、必要な意見を伝えやすくなります。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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