N1より先に、仕事の日本語で大切になること

日本語を学んでいる人の中には、N1を持っていないことを不安に感じる人がいます。就職を考える場面では、なおさらそうかもしれません。日本語がまだ十分ではないのではないか、もっと上手に話せなければならないのではないか。そう感じるのは自然なことです。

もちろん、仕事をするうえで、ある程度の日本語力は必要です。N1レベルが求められる場面もあるでしょう。

ただ、仕事の場でいつも問われるのは、資格や点数だけではありません。それ以上に大切になるのは、相手とやり取りをしながら、きちんと伝わる形で関わろうとすることです。

相手とやり取りを進める力

たとえば、相手の話をしっかり聞くこと。わからない言葉があれば、そのままにせず聞き返すこと。誤解がありそうなときに、自分で理解した内容を確かめること。こうしたことは、特別な技術というより、仕事の日本語の土台に近いものです。

「聞き返すのは失礼ではないか」と心配する人もいます。けれども、わからないまま話を進めるより、確認しながら理解しようとする方が、相手にとっても安心できることがあります。聞き返すことや確認することは、理解しようとする態度の表れでもあります。

日本語力が高い人ほど気をつけたいこと

その一方で、日本語力に自信がある人ほど気をつけたいこともあります。話の内容を十分に理解していないのに、何となくわかったつもりで返事をしてしまうことです。テストの結果がよいことと、実際のやり取りの中で正確に受け取り、伝えることとは、必ずしも同じではありません。

仕事の場では、少しの行き違いが、そのまま相手との信頼に関わることがあります。だからこそ、流暢に話せるかどうかだけでなく、わからないことをそのままにしない姿勢が大切になります。

完璧さより、通じ合おうとすること

日本語の学習では、どうしても語彙や文法、試験の結果に目が向きやすくなります。それらはもちろん重要です。ただ、実際の仕事の場で必要になるのは、相手の話を受けとめ、必要なところで確かめながら、やり取りを進めていく力です。

完璧な日本語を目指すことは悪いことではありません。けれども、仕事の日本語を考えるとき、まず大切なのは、間違えないことだけではなく、相手と通じ合おうとすることではないでしょうか。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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