自己PRや志望動機の例文をまねる前に考えたいこと

日本の就職活動では、自己PRや志望動機を書く場面が多くあります。

そのとき、例文を参考にする人も多いでしょう。

インターネットで検索すると、自己PRや志望動機の例文はたくさん見つかります。便利に見える一方で、使い方には注意が必要です。

例文は、まったく役に立たないわけではありません。

ただし、そのまままねるものではありません。

大切なのは、例文の内容を写すことではなく、どのような順番で伝えているのかを見ることです。

例文を読むと、書けた気持ちになる

自己PRや志望動機に悩んでいるとき、例文を読むと安心することがあります。

「このように書けばよいのか」と思えるからです。

特に、日本語で文章を書くことに不安がある留学生にとって、例文は助けになる場合があります。

言い方や文章の長さ、全体の流れを確認できるからです。

しかし、例文を読んだだけで、自分の自己PRや志望動機が完成するわけではありません。

例文は、他の人の経験をもとに作られた文章です。

そのまま使うと、自分の経験や考えが見えにくくなります。

例文の内容をまねると、自分らしさが消える

自己PRや志望動機で大切なのは、自分の経験や考えを伝えることです。

けれども、例文の内容をまねると、誰にでも当てはまる文章になりやすくなります。

たとえば、次のような表現はよく使われます。

「私は責任感があります」
「私は協調性を大切にしています」
「貴社の理念に共感しました」

これらの表現自体が悪いわけではありません。

ただ、その言葉だけでは、あなたがどのような経験をし、何を考えてきたのかは伝わりにくいです。

読み手が知りたいのは、きれいな言葉ではありません。

その言葉の後ろにある、具体的な経験や考え方です。

例文で見るべきなのは、構成である

例文を使うなら、内容をまねるのではなく、構成を見ることが大切です。

たとえば、自己PRでは次のような流れがよく使われます。

最初に、自分の強みを述べる。
次に、その強みが表れた経験を説明する。
その経験の中で、何を考え、どう行動したかを書く。
最後に、その強みを仕事でどう生かしたいかをまとめる。

この流れを見ることは、役に立ちます。

なぜなら、自分の経験をどの順番で整理すればよいかがわかるからです。

志望動機でも同じです。

その会社に関心を持った理由、どのような点に魅力を感じたのか、自分の経験や考えとどうつながるのかを整理する必要があります。

例文は、その順番を確認するために使うとよいでしょう。

自分の経験を入れないと、文章は弱くなる

自己PRや志望動機では、自分の経験が大切です。

どれだけ自然な日本語で書かれていても、自分の経験が入っていない文章は、印象に残りにくくなります。

たとえば、「チームワークを大切にしています」と書く場合、その理由が必要です。

どのような場面で、そう考えるようになったのか。
人と関わる中で、どのような経験をしたのか。
その経験から、何を学んだのか。

このような内容があると、文章に具体性が出ます。

留学生の場合、留学生活、授業、研究、アルバイト、地域での活動など、さまざまな経験があります。

それらの経験を、自分の言葉で整理することが大切です。

日本語の自然さだけを目的にしない

例文を参考にすると、日本語の表現を学ぶことができます。

どのように文を始めるのか。
どのように理由を説明するのか。
どのように最後をまとめるのか。

このような点を見ることは大切です。

ただし、日本語の自然さだけを目的にすると、内容が自分から離れてしまうことがあります。

自己PRや志望動機では、きれいな日本語よりも、考えが伝わる日本語が大切です。

少しシンプルな表現でも、自分の経験や考えがはっきり伝わる方がよい場合があります。

難しい言葉を使う必要はありません。

一文を短くし、何を伝えたいのかを明確にすることが大切です。

例文を使う前に、自分の材料を整理する

例文を見る前に、まず自分の材料を整理しておくとよいでしょう。

たとえば、次のようなことを考えます。

これまで力を入れた経験は何か。
その経験で、何に困ったのか。
そのとき、何を考えたのか。
どのように行動したのか。
その経験から、何を学んだのか。

このように整理してから例文を見ると、例文に引っぱられにくくなります。

例文に自分を合わせるのではなく、自分の経験を伝えるために、例文の構成を利用することができます。

例文は、完成形ではなく参考材料である

例文は、完成形として使うものではありません。

自己PRや志望動機を書くための参考材料です。

例文を読むときは、次の点を見るとよいでしょう。

どこで結論を述べているか。
どこで具体的な経験を説明しているか。
どこで理由や考え方を伝えているか。
最後に何をまとめているか。

このように見ると、例文は丸写しするものではなく、文章の組み立てを学ぶ材料になります。

仕事の日本語にもつながる考え方

自己PRや志望動機を書くときに必要なのは、自分の考えを整理し、相手に伝わる順番で表現する力です。

これは、就職活動だけでなく、仕事の場でも必要になります。

仕事では、報告、相談、説明、依頼など、自分の考えを相手に伝える場面が多くあります。

そのときも、例文のような決まった表現を覚えるだけでは十分ではありません。

相手が知りたいことは何か。
どの順番で伝えるとわかりやすいか。
自分の考えを、どの言葉で表すか。

このように考えて言葉を選ぶことが大切です。

ビジネス日本語は、敬語を覚えることだけではありません。

自分の考えを整理し、相手に伝わる形で表現する力も含まれます。

まとめ

自己PRや志望動機の例文は、使い方によっては役に立ちます。

ただし、そのまままねるものではありません。

大切なのは、例文の内容を写すことではなく、構成や伝える順番を見ることです。

自分の経験、考え、学んだことを整理し、それを相手に伝わる日本語で表現する。

その作業が、自己PRや志望動機を書くうえで大切です。

※この記事は、過去に公開した留学生の就職活動に関するコラムをもとに、現在の方針に合わせて再構成したものです。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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