留学生が無理に空気を読まなくてよい場面

日本で生活していると、「空気を読む」という言葉を聞くことがあります。

就職活動や職場でも、はっきり言葉にされていないことを理解したり、相手の様子を見て行動したりすることが求められる場面があります。

ただ、留学生にとって、この「空気を読む」はわかりにくいものです。

相手が本当にそう思っているのか。
社交的な言葉なのか。
確認してよいのか。
黙って受け取った方がよいのか。

迷うこともあるでしょう。

日本のコミュニケーションでは、相手の気持ちや場の雰囲気を考えることが大切にされる場面があります。

しかし、すべてを察しようとしなくてもかまいません。

わからないことを確認することも、仕事の場では大切な力です。

「空気を読む」は、すべてを察することではない

「空気を読む」と聞くと、相手が言っていないことまで理解しなければならないように感じるかもしれません。

けれども、実際には、すべてを正確に察することは日本語母語話者でも簡単ではありません。

場面や相手との関係によって、言葉の受け取り方は変わります。

たとえば、「また今度」という言葉があります。

本当に次の機会を考えている場合もあれば、やわらかく会話を終えるために使われる場合もあります。

元の記事でも、「じゃあ、また今度ね」と言われた留学生が、具体的な日程を確認しようとして戸惑った例が紹介されていました。そこでは、日本語の曖昧な表現をすべて建前として読むのではなく、関係をつくるために自分から動いてもよい、という視点が示されています。元記事

大切なのは、「これは必ずこういう意味だ」と決めつけないことです。

相手の言葉を受け取りながら、必要なときは確認する。これも、コミュニケーションの一つです。

確認してよい場面がある

日本では、はっきり言わない表現が使われることがあります。

しかし、就職活動や仕事の場では、確認しないまま進めると困ることもあります。

たとえば、面接の日程、提出物の締切、仕事の指示、担当する範囲などは、曖昧なままにしない方がよい内容です。

このような場面では、「空気を読む」ことよりも、必要な情報を確認することが大切です。

確認することは、失礼なことではありません。

むしろ、誤解を減らし、相手と同じ理解で進めるために必要な行動です。

ただし、聞き方には工夫が必要です。

強く問いただすのではなく、相手の状況を考えながら、確認したい内容を短く伝えるとよいでしょう。

予定や約束は、曖昧にしすぎない

予定や約束に関することは、無理に空気を読もうとしすぎない方がよい場面です。

たとえば、「また今度」と言われたとき、それが本当に誘いなのか、会話の終わりの表現なのかは、すぐにはわからないことがあります。

そのようなとき、相手との関係を続けたいなら、軽く確認してもかまいません。

たとえば、次のような言い方ができます。

「私は来週の水曜日なら空いています。」
「もしご都合が合えば、またお話しできたらうれしいです。」
「具体的に日程を決めても大丈夫でしょうか。」

このように言えば、相手に強く迫る表現にはなりません。

相手が本当に予定を考えている場合は、話が進みやすくなります。

もし社交的な言葉だった場合でも、相手はそこで調整することができます。

すべてを自分の中で判断しようとせず、必要なところだけ確認することが大切です。

就職活動では、わからない条件を確認してよい

就職活動では、企業説明会、面接、応募書類、選考の案内など、確認が必要な情報が多くあります。

このとき、「こんなことを聞いたら失礼かもしれない」と考えて、確認できないことがあります。

しかし、日時、場所、提出方法、必要書類、連絡方法などは、わからなければ確認してよい内容です。

確認しないまま間違えるよりも、早めに確認する方がよい場合があります。

たとえば、次のように聞くことができます。

「念のため確認させてください。」
「提出方法について、確認してもよろしいでしょうか。」
「理解が違っていたら申し訳ありません。面接はオンラインで実施されるという理解でよろしいでしょうか。」

このような表現を使うと、相手への配慮を示しながら確認できます。

空気を読むことよりも、正しく理解することが必要な場面です。

職場では、指示の理解を確認してよい

職場でも、わからないことをそのままにしないことが大切です。

日本語がわからないから聞く、というだけではありません。

仕事内容、優先順位、締切、報告の方法などは、日本語母語話者でも確認が必要な場合があります。

仕事では、自分だけの判断で進めると、あとで行き違いが起きることがあります。

そのため、指示を受けたときに、必要な点を確認することは大切です。

たとえば、次のように言えます。

「確認ですが、こちらは今日中に対応すればよろしいでしょうか。」
「先にAを進めて、その後Bに入るという理解でよろしいですか。」
「念のため、完成後はメールでご報告すればよいでしょうか。」

このような確認は、相手に反抗しているわけではありません。

仕事を正確に進めるための確認です。

人間関係では、読みすぎないことも大切

相手の言葉の裏を読みすぎると、人間関係がつくりにくくなることがあります。

「本当は迷惑だったのではないか」
「これは建前だったのではないか」
「自分が何か間違えたのではないか」

このように考えすぎると、次の行動ができなくなります。

もちろん、相手の反応をまったく見ないで行動するわけではありません。

ただし、すべてを悪い方向に受け取る必要もありません。

相手が誘ってくれたなら、まずはその言葉をそのまま受け取ってみる。

必要であれば、軽く確認する。

そのように考えると、関係をつくるきっかけが生まれやすくなります。

空気を読むより、言葉で確認する方がよい場面

無理に空気を読まなくてよい場面には、共通点があります。

それは、確認しないと行動できない場面です。

日時、場所、締切、担当範囲、提出方法、仕事の優先順位などは、あいまいなままにしない方がよい内容です。

このような場合は、相手の本音を想像し続けるよりも、言葉で確認した方が安全です。

ただし、確認するときは、相手を責める言い方にしないことが大切です。

「どういう意味ですか」と強く聞くよりも、次のように言うとやわらかくなります。

「確認させてください。」
「念のため、お伺いしてもよろしいでしょうか。」
「私の理解が合っているか確認したいです。」

このような表現を使うと、相手に配慮しながら確認できます。

ビジネス日本語は、察する力だけではない

日本の職場では、相手の状況を考えることが大切にされます。

けれども、ビジネス日本語で必要なのは、察する力だけではありません。

わからないことを適切に確認する力も必要です。

確認の仕方、聞くタイミング、言葉のやわらかさによって、相手への伝わり方は変わります。

つまり、ビジネス日本語は、敬語を覚えることだけではありません。

相手との関係や場面を考えながら、必要なことを言葉にする力でもあります。

まとめ

留学生が日本の就職活動や職場で、すべての空気を読もうとする必要はありません。

相手の気持ちや場の雰囲気を考えることは大切です。

しかし、日時、締切、仕事内容、提出方法など、確認が必要なことは言葉で確認してよい場面です。

大切なのは、無理に察し続けることではありません。

相手に配慮しながら、必要なことを確認することです。

その力は、就職活動だけでなく、日本の職場で働くときにも役立ちます。

※この記事は、過去に公開した留学生の就職活動に関するコラムをもとに、現在の方針に合わせて再構成したものです。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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