自己PRで大切なのは、難しい日本語より伝わる日本語

日本の就職活動では、自己PRを書く場面があります。

留学生の場合、自己PRの内容だけでなく、日本語の表現にも不安を感じることがあるかもしれません。

「正しい日本語で書けているだろうか」
「もっと難しい言葉を使った方がよいのだろうか」
「日本人らしい表現にしなければならないのだろうか」

このように考える人もいます。

もちろん、日本語の正確さは大切です。誤字脱字が多かったり、文の意味がわかりにくかったりすると、内容が伝わりにくくなります。

ただし、自己PRで大切なのは、難しい日本語を使うことではありません。

自分の経験や考えが、相手に伝わる日本語で書かれていることです。

難しい日本語を使えばよいわけではない

自己PRを書くとき、丁寧で立派な文章にしようとして、難しい言葉を使いすぎることがあります。

しかし、難しい言葉を多く使うと、かえって内容がわかりにくくなる場合があります。

たとえば、自分の経験を説明したいのに、抽象的な言葉ばかりになると、読み手は具体的な場面を想像しにくくなります。

「主体性を発揮しました」
「協調性を重視しました」
「多様な価値観を尊重しました」

このような表現は、自己PRでよく使われます。

ただし、この言葉だけでは、実際に何をしたのかは十分に伝わりません。

読み手が知りたいのは、言葉の立派さではなく、その言葉を支える経験です。

伝わる日本語には、具体的な行動がある

自己PRで大切なのは、自分の行動を具体的に書くことです。

たとえば、「協調性があります」と書くだけでは、どのような協調性なのかがわかりません。

その代わりに、次のような点を整理します。

誰と関わったのか。
どのような場面だったのか。
何に困ったのか。
自分はどのように行動したのか。
その結果、何が変わったのか。

このように具体的に書くと、読み手はその場面を想像しやすくなります。

難しい言葉を使わなくても、具体的な行動が書かれていれば、その人らしさは伝わります。

一文を短くすると、内容が伝わりやすくなる

留学生が日本語で自己PRを書くとき、一文が長くなることがあります。

一つの文の中に、経験、理由、結果、学びをすべて入れようとすると、文の構造が複雑になります。

文が長くなると、主語と述語の関係がわかりにくくなります。

また、読み手が途中で内容を追いにくくなることもあります。

自己PRでは、一文を短くすることを意識するとよいでしょう。

一つの文には、一つの内容を書く。
理由と結果を分けて書く。
行動と学びを分けて書く。

このように整理すると、内容が伝わりやすくなります。

短い文は、幼い文という意味ではありません。

相手に伝わるように整理された文です。

「何をしたか」と「なぜしたか」を分ける

自己PRでは、行動だけでなく、その理由も大切です。

ただし、「何をしたか」と「なぜしたか」が一つの文に混ざると、読み手に伝わりにくくなることがあります。

たとえば、次のように分けて考えると整理しやすくなります。

まず、どのような場面だったのかを書く。
次に、自分が何を考えたのかを書く。
その後、どのように行動したのかを書く。
最後に、その経験から何を学んだのかを書く。

この順番にすると、読み手は話の流れを追いやすくなります。

自己PRは、自分の経験をただ並べる文章ではありません。

読み手が理解しやすい順番で、経験と考えを伝える文章です。

日本語の自然さよりも、まず内容の整理が大切

自己PRを書くとき、「日本人らしい表現」にしようとする人もいます。

自然な日本語を目指すことは大切です。

しかし、日本語の自然さばかりを気にすると、肝心の内容が弱くなることがあります。

きれいな表現になっていても、自分の経験や考えが入っていなければ、自己PRとしては伝わりにくくなります。

まず大切なのは、何を伝えたいのかをはっきりさせることです。

自分の強みは何か。
その強みは、どの経験に表れているのか。
その経験で、自分は何を考えたのか。
仕事でどのように生かしたいのか。

この内容が整理されていれば、日本語の表現も整えやすくなります。

伝わる日本語は、相手を意識している

自己PRは、自分について書く文章です。

けれども、自分だけがわかる書き方では十分ではありません。

読み手は、あなたの経験を直接知りません。

そのため、相手が初めて読むことを意識して書く必要があります。

専門的な内容を書く場合は、説明が必要です。

留学先や研究、アルバイトの内容も、自分には当たり前でも、読み手にはわかりにくいことがあります。

相手が状況を理解できるように、必要な情報を入れることが大切です。

ただし、説明を増やしすぎると、自己PRの中心がぼやけます。

相手に伝えるために、何を入れ、何を省くかを考えることも必要です。

言葉を整えることは、考えを整えることでもある

自己PRの日本語を整える作業は、表現をきれいにするだけではありません。

自分の考えを整理する作業でもあります。

文を書いているうちに、「本当に伝えたいことは何か」が見えてくることがあります。

反対に、うまく書けないときは、内容がまだ整理できていない場合もあります。

そのときは、日本語だけを直そうとするのではなく、経験の整理に戻ることも大切です。

何を伝えたいのか。
なぜその経験を選ぶのか。
その経験から何を学んだのか。

このように考え直すことで、文章も整いやすくなります。

仕事の場でも必要になる日本語力

自己PRで必要な日本語力は、就職活動だけで終わるものではありません。

仕事の場でも、自分の考えを相手に伝える力は必要です。

報告、相談、説明、依頼など、仕事では多くの場面で日本語を使います。

そのときに大切なのは、難しい敬語をたくさん使うことだけではありません。

相手が知りたいことは何か。
どの順番で伝えるとわかりやすいか。
どの表現なら、相手に誤解なく伝わるか。

このように考えて言葉を選ぶ力が必要です。

自己PRを書くときに行う「経験を整理する」「考えを言葉にする」「相手に伝わる順番で書く」という作業は、ビジネス日本語にもつながります。

まとめ

自己PRで大切なのは、難しい日本語を使うことではありません。

自分の経験や考えが、相手に伝わる日本語で書かれていることです。

一文を短くする。
具体的な行動を書く。
理由と結果を分ける。
読み手が初めて読むことを意識する。

このような基本を意識することで、自己PRは伝わりやすくなります。

自己PRの日本語を整えることは、自分の考えを整理することでもあります。

それは、就職活動だけでなく、仕事の場で自分の考えを伝える力にもつながります。

※この記事は、過去に公開した留学生の就職活動に関するコラムをもとに、現在の方針に合わせて再構成したものです。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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