日本語では、話すときの言葉と、書くときの言葉がかなり違います。
この違いは、単に「ていねいかどうか」だけではありません。言葉の形や文の組み立て方、相手への示し方にも表れます。
1. 話し言葉と書き言葉は、役割がちがう
もちろん、どの言語でも、話し言葉と書き言葉にはある程度の差があります。
ただ、日本語はその差が見えやすい言語の一つです。ふだんの会話では自然に使える言い方が、メールや文書になると、そのままでは合わないことも少なくありません。
話し言葉は、その場で相手とやり取りをしながら使う言葉です。
前後の流れや表情、声の調子に助けられるため、少し省略があっても成り立ちます。文も短くなりやすく、言いさしの形でも通じることがあります。
一方、書き言葉は、文字だけで内容を伝える言葉です。
その場で説明を足すことができないため、話し言葉よりも形を整える必要があります。あとで読み返されることもあるため、何を書いたかがはっきり残ることも、書き言葉の特徴です。
2. 同じ内容でも、話すときと書くときでは表現が変わる
そのため、日本語では、同じ内容でも、話すときと書くときで表現が変わります。
たとえば、会話では短く言えることでも、書くときには説明を補ったり、言い方を整えたりします。
話す場面では、その場の関係や流れが支えになりますが、書く場面では、それを言葉そのもので補わなければならないからです。
この違いは、話し言葉が不十分で、書き言葉が正しいということではありません。
それぞれに合う場面があり、求められる役割が違うということです。
3. 書き言葉の中にも、いくつかの形がある
また、書き言葉の中にも違いがあります。
日本語では、よく「です・ます」を使う敬体と、「だ・である」を使う常体に分けて考えられます。
敬体は、相手に向けてていねいに伝える形です。
メールや案内文など、相手を意識した文章でよく使われます。
常体は、内容を簡潔に述べる形です。
説明文や報告書、論文などで使われることがあります。
つまり、日本語の「書く」は一つではありません。
書く相手、書く目的、文章が置かれる場によって、合う形が変わります。
4. 日本語の使い方を考えるときの基本
ここで大切なのは、話し言葉がくだけていて、書き言葉が正しい、ということではないという点です。
それぞれに合う場面があり、それぞれに役割があります。
話し言葉では、やり取りのしやすさが大切です。
書き言葉では、読みやすさや残り方が大切です。
その違いが、日本語では表現の差として比較的大きく表れます。
日本語を学ぶとき、文法や語彙だけでなく、この「話す」と「書く」の違いに気づくことはとても重要です。
特に仕事の場面では、内容が同じでも、話すのか書くのかによって、適切な言い方が変わります。
話し言葉と書き言葉の違いを知ることは、表現を増やすことだけではありません。
場面に合った言葉を選ぶ感覚を持つことにつながります。
日本語の使い方を考えるとき、話し言葉と書き言葉の違いは、基本として押さえておきたい点の一つです。

