留学生の自己分析は、何を整理することなのか

日本の就職活動では、自己PRや面接の中で、自分について話す場面が多くあります。

「あなたの強みは何ですか」
「学生時代に力を入れたことは何ですか」
「これまでの経験から何を学びましたか」

このような質問に答えるために、自己分析が必要だと言われます。

ただ、自己分析と聞くと、「自分の強みを見つけなければならない」と考える人も多いかもしれません。

もちろん、自分の強みや弱みを知ることは大切です。けれども、自己分析は、強みを無理に作る作業ではありません。

大切なのは、これまでの経験を振り返り、自分が何を考え、どのように行動してきたのかを整理することです。

自己分析は、強みを作る作業ではない

就職活動では、自分の強みを言葉にする必要があります。

しかし、最初から「私の強みは何だろう」と考えると、なかなか言葉が出てこないことがあります。

また、無理に強みを探そうとすると、自分らしくない言葉になってしまうこともあります。

たとえば、「責任感があります」「協調性があります」「行動力があります」という表現は、よく使われます。

けれども、その言葉だけでは、あなたがどのような人なのかは十分に伝わりません。

自己分析で大切なのは、まず言葉を決めることではなく、経験を整理することです。

どのような場面で、何を考えたのか。
どのように行動したのか。
その結果、何を学んだのか。

このように振り返ることで、自分の特徴が少しずつ見えてきます。

まず、これまでの経験を書き出す

自己分析のはじめに行いたいのは、これまでの経験を書き出すことです。

大学生活、アルバイト、研究、サークル活動、ボランティア、留学生活など、自分にとって印象に残っている出来事を振り返ります。

このとき、最初から「就職活動に使えそうかどうか」を判断しなくてもかまいません。

うまくいった経験だけでなく、困ったこと、失敗したこと、迷ったことも書き出してみます。

失敗や悩みの中にも、自分の考え方や行動の特徴が表れることがあります。

たとえば、次のような経験も自己分析の材料になります。

日本語でうまく説明できず、工夫した経験。
グループワークで意見が合わなかった経験。
アルバイトでお客様や同僚と関わった経験。
研究や授業で、準備を続けた経験。

大きな成果があるかどうかよりも、その経験の中で自分がどう考え、どう動いたかを見ることが大切です。

次に、なぜその行動をしたのかを考える

経験を書き出したら、次に考えたいのは、そのときの理由や動機です。

同じ行動をしていても、その理由は人によって違います。

たとえば、グループワークで自分から役割を引き受けた場合でも、理由はいろいろ考えられます。

チーム全体を進めたかったから。
自分の得意な部分を生かせると思ったから。
誰も担当していなかったので必要だと感じたから。

このように、「なぜそうしたのか」を考えると、自分の価値観や判断の仕方が見えてきます。

自己分析では、行動そのものだけでなく、その背景にある考え方を整理することが大切です。

そのとき何を感じたのかも整理する

自己分析では、行動や結果だけでなく、そのとき感じたことも大切です。

うれしかったこと、悔しかったこと、不安だったこと、納得できなかったこと。

こうした感情を振り返ることで、自分が何を大切にしているのかが見えやすくなります。

たとえば、うまく説明できなかったことが悔しかった場合、そこには「相手にきちんと伝えたい」という気持ちがあるかもしれません。

チームで意見が合わなかったことが気になった場合、そこには「相手の考えも理解しながら進めたい」という姿勢があるかもしれません。

感じたことを整理することは、自分の内面を無理に見せることではありません。

自分が何を大切にし、どのような場面で力を発揮しやすいのかを知るための手がかりになります。

強みや弱みは、経験のあとから見えてくる

強みや弱みは、最初から一つの言葉で決める必要はありません。

経験、行動、理由、感じたことを整理していく中で、少しずつ見えてくるものです。

たとえば、いくつかの経験を振り返ったときに、共通する行動が見つかることがあります。

困っている人に気づきやすい。
準備を丁寧に進める。
相手に合わせて説明を変える。
わからないことをそのままにせず確認する。

このような共通点が見つかると、それを自己PRの材料として整理しやすくなります。

反対に、苦手なことも見えてくるかもしれません。

大切なのは、弱みを隠すことではありません。

自分の苦手な点を知り、それに対してどのように工夫しているかを考えることです。

読み手や聞き手に伝わる形にする

自己分析で整理した内容は、そのまま応募書類や面接で使えるわけではありません。

自分ではよくわかっている経験でも、読み手や聞き手は初めてその話を聞きます。

そのため、相手に伝わる順番で整理する必要があります。

まず、何を伝えたいのかを決める。
次に、その理由を考える。
そして、具体的な経験を入れる。
最後に、その経験から何を学んだのかをまとめる。

この流れを意識すると、自己分析で見えた内容を、自己PRやガクチカにつなげやすくなります。

大切なのは、すべてを詳しく書くことではありません。

相手に伝えたいことを一つ決め、その内容が伝わる経験を選ぶことです。

日本語で書くときは、文を短くする

留学生が自己PRやガクチカを書くとき、日本語の表現に不安を感じることがあります。

難しい言葉を使わなければならないと思う人もいるかもしれません。

しかし、自己分析の内容を伝えるときに大切なのは、難しい日本語を使うことではありません。

読み手が理解しやすい日本語で書くことです。

一文を短くする。
一つの文に一つの内容を書く。
主語と述語の関係をわかりやすくする。
理由と結果を分けて書く。

このような点を意識すると、経験や考え方が伝わりやすくなります。

自己分析は、自分の中だけで終わるものではありません。

整理した内容を、相手に伝わる日本語で表現するところまで考えることが大切です。

自己分析は、仕事の日本語にもつながる

自己分析は、就職活動のためだけの作業ではありません。

自分の経験を整理し、考えを言葉にする力は、仕事の場でも必要になります。

仕事では、報告、相談、説明、依頼など、自分の考えを相手に伝える場面が多くあります。

そのときにも、ただ事実を並べるだけではなく、何を伝えたいのか、相手は何を知りたいのかを考える必要があります。

自己分析で行う「経験を整理する」「理由を考える」「相手に伝わる形にする」という作業は、ビジネス日本語にもつながります。

ビジネス日本語は、敬語を覚えることだけではありません。

自分の考えを整理し、相手との関係や目的に合わせて伝える力も含まれます。

まとめ

留学生の自己分析は、強みを無理に作る作業ではありません。

これまでの経験を振り返り、自分が何を考え、どのように行動してきたのかを整理する作業です。

経験、行動、理由、感じたことを見ていくことで、自分の特徴や大切にしていることが見えてきます。

そして、それを相手に伝わる順番と日本語で表現することが、自己PRやガクチカにつながります。

自己分析は、就職活動だけでなく、仕事の場で自分の考えを伝える力にもつながるものです。

※この記事は、過去に公開した留学生の就職活動に関するコラムをもとに、現在の方針に合わせて再構成したものです。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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