日本で働く期間をどう考えるか—年数より大切なキャリアの見通し

日本で就職活動をする留学生は、面接などで「日本でどれくらい働くつもりですか」と聞かれることがあります。

この質問に対して、

「3年くらい働きたいです」
「5年働いたら母国に戻りたいです」
「できれば長く日本で働きたいです」
「まだわかりません」

と答える人もいるでしょう。

どの答えが正しい、ということではありません。

大切なのは、年数そのものではなく、その期間に何を経験したいのか、どのような力を身につけたいのかを考えているかどうかです。

「何年働くか」だけでは伝わりにくい

日本で働く期間を考えることは大切です。

ただし、「3年」「5年」「ずっと」といった年数だけでは、自分の考えは十分に伝わりません。

たとえば、「3年働いたら帰国します」と言うと、計画があるように聞こえるかもしれません。

しかし、その3年間で何を学びたいのか、どのような経験を積みたいのか、その後のキャリアにどうつなげたいのかが見えなければ、相手には伝わりにくくなります。

反対に、「ずっと日本で働きたいです」と言っても、それだけで安心されるとは限りません。

本当に長く働きたいと考えているのか。
どのような働き方をイメージしているのか。
日本で働き続けるために、何を準備しているのか。

そこまで考えていなければ、言葉だけの答えに見えてしまうことがあります。

「わからない」は悪い答えではない

将来のことを、今すべて決めることはできません。

就職活動の時点で、10年後、20年後まで正確に決めている人は多くありません。

その意味では、「まだわかりません」と感じること自体は自然です。

ただし、何も考えていないという意味の「わかりません」と、いくつかの可能性を考えたうえでの「まだ決めていません」は違います。

たとえば、

日本で経験を積んだあと、母国に戻る可能性がある。
日本で働きながら、専門性を深めたい。
将来は、日本と母国をつなぐ仕事に関わりたい。
別の国で働く可能性も考えている。

このように、いくつかの選択肢を考えているなら、「まだ決めていません」という答えにも理由があります。

大切なのは、今の時点で考えていることを、自分の言葉で説明できることです。

日本で働く経験をどう生かすか

留学生には、日本人学生とは違うキャリアの選択肢があります。

日本で長く働く人もいます。
数年働いたあと、母国に戻る人もいます。
日本での経験を生かして、別の国で働く人もいます。

どの道を選ぶとしても、日本で働いた経験をどのように生かすのかを考えておくことが大切です。

日本語を使って仕事をする経験。
日本の職場でのコミュニケーションを学ぶ経験。
チームで仕事を進める経験。
専門知識を実務の中で使う経験。
国や地域をこえて人と関わる経験。

こうした経験は、ただ日本で働けば自然に身につくものではありません。

自分が何を得たいのかを意識して働くことで、経験は次のキャリアにつながりやすくなります。

「とりあえず就職する」で終わらせない

就職活動では、内定を得ることが大きな目標になります。

しかし、内定はゴールではありません。働き始めるための通過点です。

「まずはどこかに就職できればよい」
「入社してから考えればよい」
「合わなければ転職すればよい」

このように考えることもあるかもしれません。

もちろん、働いてみなければわからないことはあります。入社後に考えが変わることもあります。

ただ、最初から何も考えずに就職先を選ぶと、自分の経験や専門性を生かしにくい職場を選んでしまうことがあります。

その結果、早い段階で転職を考えることになったり、次のキャリアにつながる経験を積みにくくなったりする可能性があります。

大切なのは、完璧な計画を立てることではありません。

今の自分にとって、どのような経験が必要なのか。
どのような環境なら、力を伸ばせるのか。
将来の選択肢を広げるために、何を意識して働くのか。

その見通しを持っておくことです。

企業は「学ぶ場所」だけではない

日本の企業では、新卒採用後に研修を行うことがあります。

そのため、「日本の会社で学びたい」「日本の会社で経験を積みたい」と考える留学生もいるでしょう。

その気持ちは自然です。

ただし、企業は学校ではありません。

企業にとって、採用や研修は、将来一緒に働き、会社に貢献してもらうためのものです。

そのため、「学ばせてもらう」という意識だけでは、相手に十分伝わりません。

自分は何を学びたいのか。
その学びを、仕事の中でどう生かしたいのか。
その企業で、どのような役割を担いたいのか。

ここまで考えることで、志望動機や企業選びの軸もはっきりしてきます。

予定は変わってもよい

キャリアの見通しは、一度決めたら変えてはいけないものではありません。

働く中で、考えが変わることはあります。
日本で働き続けたいと思うようになるかもしれません。
母国に戻って経験を生かしたいと思うかもしれません。
別の国で新しい仕事に挑戦したいと思うかもしれません。

予定が変わること自体は、悪いことではありません。

大切なのは、その時々で自分の選択を考え直せることです。

なぜその道を選ぶのか。
どの経験を次に生かすのか。
何を大切にして働きたいのか。

このような問いを持っておくと、進路が変わったときにも、自分のキャリアを説明しやすくなります。

日本語で説明できることも大切

日本で働く期間を考えることは、就職活動の答えを作るためだけではありません。

自分の考えを整理し、相手に伝わる順番で話す。
年数だけでなく、その理由や背景を説明する。
自分の希望と、相手が知りたいことの両方を意識する。

これは、仕事で必要になる日本語にもつながります。

ビジネス日本語では、正しい表現を覚えるだけでなく、相手との関係や目的に合わせて、自分の考えを伝える力が求められます。

「日本でどれくらい働くつもりですか」という質問は、年数を確認するためだけの質問ではありません。

その人が、自分の将来をどのように考えているのか。
日本で働く経験を、どのように生かそうとしているのか。
企業や仕事を、どのような視点で選ぼうとしているのか。

そうした考え方を見る質問でもあります。

年数を決めることよりも、その期間に何を経験し、次にどうつなげたいのかを考えること。

そこから、日本で働く意味を自分の言葉で説明する準備が始まります。

※この記事は、過去に公開した留学生の就職活動に関するコラムをもとに、現在の方針に合わせて再構成したものです。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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