会議で「賛成です」が強く聞こえるとき

1 ビジネス場面提示

新しいプロジェクトの方向性を決める会議で、上司や同僚が「次はSNS広告に力を入れようと思う」と提案しました。あなたも、その案には賛成です。

「ぜひやりましょう」
「賛成です」

気持ちを込めて答えたのに、なぜか少し場の空気から浮いた気がする。間違ってはいないのに、言い方だけが強く聞こえてしまう。そう感じたことはないでしょうか。

会議では、内容に賛成することと、その賛成をどう表現するかは別です。日本語では、同意の中にも「距離感」や「立場」の調整が求められます。

2 うまくいかない例

「私はその意見に賛成です。」

文法的には正しく、意味も明確です。けれども、会議の流れや相手との関係によっては、少し断定的で硬い印象になることがあります。場合によっては、「その案を評価している」「結論を急いでいる」ように聞こえることもあります。

問題は、正しいかどうかではありません。会議の場に対して、言葉の強さが少し合っていないことがあるのです。

3 なぜ強く聞こえるのか

なぜ「賛成です」の一言が、ビジネスの場面では強く聞こえるのでしょうか。そこには、言葉そのものだけではなく、その場の流れや相手との関係も関係しています。

距離

日本語では、断定的な表現ほど、自分の考えや判断をはっきり示します。「賛成です」と言い切ると、自分の判断を明確に出す形になるため、場面によっては少し前に出すぎる印象になります。少し余地を残す表現の方がなじみやすいのです。

立場

特に上司や先輩の提案に対して「賛成です」とだけ言うと、その提案を評価しているように聞こえることがあります。一メンバーなら、評価よりも「理解・共有・補足」の形で示す方が自然です。

目的

会議の目的は、賛否を並べることではなく、議論を前に進めることです。賛成を結論として置くより、議論を進める材料として出す方が、場に合った日本語になります。

強さ

「賛成」は100%の判断を示す強い言葉です。しかし、実際のビジネスでは「方向性はよいと思う」といった中間の言い方も多く使われます。どの強さで賛成を出すかを調整することが大切です。

4 改善表現

大切なのは、「賛成」をそのまま言い切ることではなく、距離・立場・目的に合わせて形を変えることです。

① 議論の流れに自然に乗る

「その方向で進めるのはよいと思います。」

「賛成」を「よいと思います」に置き換えるだけで、言い方がやわらかくなります。押しつける感じを弱められる表現です。

② 相手との認識をそろえる

「私もその方向でよいと思います。」
「私も同じ認識です。」

一人で評価を出すのではなく、相手との認識の共有として示す形です。会議の空気を壊しにくく、同意をやわらかく伝えられます。

③ 強めに賛成するなら、理由を添える

「そのご意見に賛成です。特に〇〇の点で有効だと思います。」

「賛成」という強い言葉を使うなら、理由も添えます。内容を理解したうえでの発言だと伝わります。

④ 同意を前進に変える

「私も賛成です。加えて、〇〇も準備しておくと進めやすいと思います。」

賛成だけで終わらず、次の一歩まで出すことで、発言が「評価」ではなく「貢献」に変わります。

5 まとめ

会議で信頼されるのは、「賛成」を強く主張する人ではありません。
同意を通して、議論を前に進められる人です。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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