上司への進捗報告は「順調です」だけでは足りない

多忙な上司に「例の件、どうなっている?」と聞かれたとき、次のように答えることはないでしょうか。

「はい、順調に進んでいます。問題ありません」

日本語としては間違っていません。

ただ、この答えだけでは、上司が状況を十分に分かるとは限りません。

「どこまで進んでいるのか」「何が残っているのか」「このまま進めてよいのか」が見えにくいためです。

進捗報告は、近況を伝えるだけのものではありません。

相手が次の判断をしやすいように、必要な情報を渡すことが大切です。

1. うまくいかない例:順調だけでは伝わりにくい

部下:「プロジェクトは順調です。予定通り進んでいます」

上司:「……そうか。で、具体的にA社の返答はいつ来るんだ?」

部下:「ええと、今週中には来るはずです。たぶん」

このやり取りで足りないのは、日本語の正しさではありません。

上司が知りたい情報が、まだ十分に伝わっていない点です。

「順調です」という言葉だけでは、どこまで終わっていて、何が残っていて、どこに注意が必要なのかが分かりません。

そのため、上司は安心して次の判断をすることができず、追加で確認する必要が出てきます。

2. なぜ伝わりにくいのか

進捗報告がうまく伝わらないときは、言葉が間違っているというより、相手が必要としている情報と少し合っていないことがあります。

ここでは、4つの視点で整理します。

情報の見え方

まず、部下と上司では見えている情報が違います。

現場で作業している人にとっては当たり前のことでも、上司は報告されなければ分かりません。

  • 昨日A社に連絡したこと
  • 想定より確認作業に時間がかかっていること
  • 作業は進んでいるが、返答待ちで止まっていること

進捗報告では、「自分には見えていること」を、相手にも見える形にすることが大切です。

自分と上司の役割

担当者の役割は、仕事を進めることです。

上司の役割は、全体を見て調整し、次にどうするかを判断することです。

そのため、上司は「順調かどうか」だけを知りたいわけではありません。

「このままのペースで大丈夫か」「他部署への連絡が必要か」「予定を変える必要があるか」を考えています。

報告の目的

進捗報告の目的は、事実をただ並べることではありません。

相手が判断しやすい状態にすることです。

そのために、最低限入れておきたい情報は次の3点です。

  • 今どこまで進んでいるか
  • 何が終わっていて、何が残っているか
  • いつまでに何を出せそうか

確かなことと見込みの分け方

日本語では、確定していることと、まだ予定のことを分けて伝えると分かりやすくなります。

たとえば、「終わりました」と「完了する予定です」では、相手の受け取り方が変わります。

報告が分かりにくくなるときは、事実、見込み、気になる点が一緒になっていることがあります。

それぞれを分けて伝えると、上司も状況を判断しやすくなります。

3. 改善表現:上司が判断しやすい伝え方

進捗報告では、次の4点を意識すると伝わりやすくなります。

① 完了率と期限をセットで出す

「現在7割ほど完了しており、明日の15時までには最終案をお送りできる予定です」

数字と期限を入れると、今の状況が具体的に伝わります。

上司も、このまま待てばよいのか、早めに確認した方がよいのかを判断しやすくなります。

② 終わったことと残っていることを分けて言う

「構成案の作成と資料整理は完了しており、現在は数値確認を進めております」

終わったことと残っていることを分けると、仕事の進み具合が見えやすくなります。

どこに時間がかかっているのかも伝わりやすくなります。

③ リスクや未完了の要素も伝える

「作業自体は予定通りですが、A社からの回答待ちのため、その確認後に最終化する見込みです。本日中に連絡がなければ、こちらから再度確認します」

問題がないように見せることより、どこで止まる可能性があるのかを伝えることが大切です。

気になる点が見えていると、上司も必要な対応を考えやすくなります。

④ 相談が必要なときは、判断を仰ぐ形にする

「現時点で少し遅れが出ております。優先順位について、一度ご相談させていただけますでしょうか

自分だけで判断しにくいときは、早めに相談に切り替えることも大切です。

「どうしましょうか」だけでなく、何について判断してほしいのかを伝えると、相談が進みやすくなります。

4. まとめ

進捗報告は、自分の作業状況を話すだけのものではありません。

上司が次の判断をしやすいように、必要な情報を具体的に渡すことが大切です。

「順調です」だけで終わらせず、今どこまで進んでいるのか、何が残っているのか、いつまでに何ができそうなのかを添えて伝えてみましょう。

そうすると、相手にとって分かりやすい報告になります。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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