キャリアの希望を、相談の形に変える

評価面談や1on1で、上司から「今後、やってみたい仕事はありますか」と聞かれることがあります。

本当は少し別の分野にも関わってみたい。今の仕事だけで終わりたくない。将来に向けて経験を広げたい。そう思っていても、言葉にするのは簡単ではありません。

ここで多いのが、前向きなつもりで話したのに、今の仕事への不満のように聞こえてしまうことです。

1. うまくいかない例

たとえば、以下のような伝え方です。

  • 「将来はマーケティングの仕事がしたいです」
  • 「今のルーチン業務より、企画の仕事に興味があります」
  • 「来年はもっと別の仕事を任せてもらいたいです」

日本語として不自然ではありません。

ただ、上司の立場から聞くと、「今の業務に満足していないのか」「自分の希望だけを優先しているのか」と受け取られることがあります。

問題は語彙や文法ではありません。相談の始め方に工夫が必要なのです。

2. なぜ伝わりにくくなるのか

① 今の業務とのつながり

日本の職場では、希望だけを急に伝えると、強く聞こえることがあります。必要なのは、希望を消すことではありません。今の業務とのつながりを伝えることです。つながりが見えないと、自分の希望だけを伝えているように受け取られることがあります。

② 現在の役割

見られているのは、今の役割をどう理解しているかです。今の業務の途中で「次はこれ」と先に言うと、意欲よりも、話す順番が合わないように見えることがあります。今の役割を軽く見ていない姿勢を見せた上で話すと、同じ希望でも印象は大きく変わります。

③ 相談の目的

この場の目的は、夢を語ることではありません。現実的な次の一歩を探ることです。日本の職場では、個人の成長そのものより、その成長が仕事やチームにどう役立つかが重視されます。「やりたい」の先に、仕事への貢献が見えているかが大切です。

④ 希望の伝え方

「やりたいです」は率直な表現ですが、場面によっては強く聞こえることがあります。「関わってみたいと考えています」のように伝え、「もし可能であれば」や「将来的には」といった言葉を添えると、相手も考えやすくなります。これは遠慮ではなく、相手が受け取りやすい形に整えることです。

3. 改善表現

場面ごとに見ると、伝え方を整理しやすくなります。

① 今の業務を外さずに希望を入れる

「今の業務をしっかり続けながら、将来的には企画の仕事にも関われたらと考えています」

② 希望を役割の広がりとして見せる

「これまでの実務経験を活かして、少しずつ上流の業務にも関われないかと考えています」

③ 自分の関心と会社への貢献をつなぐ

「今後は〇〇の分野も学びながら、チームにより貢献できる幅を広げたいと考えています」

④ 質問の形で次の一歩を聞く

「そのために、今の段階で意識しておいたほうがよいことがあれば、ぜひ伺いたいです」

⑤ 言い方を少しやわらかくする

「将来的には〇〇の分野にも関心があり、今後の方向について一度ご相談できればと思っています」

4. まとめ

キャリア相談で見られているのは、やる気の強さだけではありません。

今の役割を踏まえながら、次の一歩をどのように相談できるかです。

大切なのは、立派な言葉を使うことではありません。今の業務とのつながり、現在の役割、相談の目的、希望の伝え方を整えて話すことです。

門永 美保

ビジネス日本語講師

日本語教師養成講座420時間修了。2015年4月から現在まで、京都府内大学の留学生を対象としたビジネス日本語の講義で非常勤講師を務めています。

2023年からは日系企業に就職したい・就業している世界中の人へ向けたビジネス日本語のオンラインレッスンを展開。

留学生の就職支援業務の経験もあり、ビジネスマナーも含めたアドバイスを行えます。

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