日本語学習では「ビジネス日本語=敬語」と捉えられがちですが、実際には敬語はビジネス日本語の一部にすぎ
ません。それ以外の語彙や表現の方が圧倒的に多いです。
敬語は「言う → おっしゃる / 申す」「行く → いらっしゃる / 参る」など、変化する語彙のパターンが限られています。しかし、ビジネス日本語では、敬語以外の表現や語彙の習得がより重要になります。
例えば、次のような語彙やフレーズがビジネスの場でよく使われます。
1. クッション言葉(依頼・提案をやわらかくする)
• 「恐れ入りますが~」
• 「お手数ですが~」
• 「差し支えなければ~」
• 「もし可能でしたら~」
2. 曖昧表現・遠回しな言い方(断る・否定する)
• 「前向きに検討いたします」 → (実際は乗り気でない場合も)
• 「貴重なご意見として承ります」 → (必ずしも採用するとは言っていない)
• 「難しいかもしれません」 → (ほぼできないが、やんわりと伝える)
3. ビジネス特有の語彙
• 「進捗(しんちょく)」→ 進み具合
• 「共有(きょうゆう)」→ 情報を知らせる
• 「調整(ちょうせい)」→ 予定や条件を合わせる
• 「対応(たいおう)」→ 処理する、対策をとる
4. メールや文書で使う表現
• 「お世話になっております。」
• 「ご確認のほど、よろしくお願いいたします。」
• 「何卒(なにとぞ)よろしくお願い申し上げます。」
• 「取り急ぎ、ご報告まで。」
このように、敬語の語彙は限られていますが、ビジネス日本語ではそれ以外の表現の方が圧倒的に多く、重要です。 そのため、単に敬語を暗記するだけでは不十分で、場面に応じた柔軟な表現力が求められます。
「敬語を覚えたらビジネス日本語ができる」と思わず、「敬語+ビジネス表現」の両方をバランスよく学ぶことが大切です。