「ビジネス日本語を身につける」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
多くの方が「敬語をきちんと使えるようになること」と答えるのではないでしょうか。
もちろん、敬語は日本の職場ではとても大切です。でも、ビジネス日本語=敬語 という考えだけで本当に大丈夫でしょうか?
今回はその点について、いっしょに考えてみましょう。
なぜ「ビジネス日本語=敬語」と思われやすいのか?
日本語を勉強していると、「敬語はむずかしい!」と感じる方も多いと思います。尊敬語、謙譲語、丁寧語… 文法も複雑ですし、相手や状況によって使い分ける必要もあります。たとえば、日本の職場で上司に「これ、やってください」と言ってしまうと、あまり良い印象にはなりません。「こちらをお願いできますでしょうか」といった丁寧な表現が求められる場面が多いのです。
そのため、敬語をマスターすることで「日本のビジネスでも通用するかも!」と感じるのは自然なことです。
また、敬語は「できた!」という達成感がわかりやすいという面もあります。たとえば、丁寧なメールが書けたときや、面接でスムーズに敬語が使えたとき、自信がつきますよね。
さらに、日本では言葉遣いから「この人はしっかりしているな」と判断されることもあるため、敬語に力を入れることはとてもよく理解できます。
しかし、ここで少し立ち止まって考えてみてください。
もし敬語が正しくても、話の内容があいまいだったり、伝えたいポイントがずれていたら、どうなるでしょう?
「丁寧だけれど、何を言いたいのかわからない…」と思われてしまうかもしれません。
実は、ビジネス日本語には、敬語だけではカバーできない大切な部分がたくさんあるのです。
敬語以外に大切な「ビジネス日本語」とは?
ビジネス日本語において、敬語はあくまで「道具のひとつ」です。次のようなスキルも同じくらい、あるいはもっと重要になることがあります。
• 専門用語や業界知識
IT、医療、マーケティングなど、どの分野でも、その業界でよく使われる言葉や知識が必要です。敬語で「かしこまりました」と言っても、内容がよくわかっていなければ信頼を得るのは難しいですよね。
• わかりやすく、正確に伝える力
会議で自分の意見を論理的に説明したり、短いメールで要点を明確に伝えたりするスキルです。丁寧な表現でも、内容がわかりにくければ意味が伝わりません。
• 状況に合わせた言葉の使い方
同僚とのカジュアルな会話、クライアントとのフォーマルな会話、電話での簡潔な対応など、場面に応じて話し方を変える力も必要です。
• 交渉やプレゼンテーションのスキル
クライアントを説得したり、チームをまとめたりするときは、言葉の使い方だけでなく、話の組み立て方も重要になります。
たとえば、上司に「このプロジェクトはこのように進めたいです」と提案する場面を想像してください。
敬語で丁寧に話しても、計画が具体的でなかったり、データが不十分だったりすれば、「少し頼りない」と思われてしまうかもしれません。
一方で、敬語がシンプルでも、話の内容がしっかりしていて、自信を持って伝えられれば、「この人はできる」と信頼を得ることができるのです。
あなたの「ビジネス日本語」のゴールは?
ここで、もう一度考えてみてください。
あなたが「ビジネス日本語」で本当に達成したいことは何ですか?
敬語を正しく使えるようになることは大切ですが、それだけで満足してしまうのは少しもったいないかもしれません。
• クライアントから信頼されるプレゼンがしたい
• チームで積極的に意見を出したい
• 短く的確なメールが書けるようになりたい
どれもビジネス日本語に必要なスキルですが、敬語だけでは対応できない部分もあります。
敬語は大切な「入り口」ですが、その先にはもっと広くて深い世界が広がっています。
実践のためのヒント
敬語以外のビジネス日本語を伸ばすために、こんなことを試してみませんか?
1. ビジネスシーンのロールプレイ
会議、プレゼン、電話応対など、実際の場面を友人や先生と練習してみましょう。「丁寧だけれどわかりにくい表現」と「シンプルだけれど伝わる表現」の違いを比べてみるのもおすすめです。
2. 業界の言葉にふれてみる
自分が興味のある分野の記事や動画を見て、どんな専門用語や言い回しが使われているかチェックしてみましょう。たとえば「KPI」や「DX」といった言葉を知っているだけでも会話がスムーズになります。
3. 伝える練習をする
短いプレゼンやメールの文を日本語で書いて、ネイティブや先生にフィードバックをもらいましょう。「敬語が少なくても伝わるか?」と考えてみるのも良い練習になります。
「ビジネス日本語=敬語」と思われやすいのは、敬語が目に見えてわかりやすいゴールだからかもしれません。
でも実際のビジネスの現場では、敬語はほんの一部にすぎません。
あなたが考える「ビジネス日本語」の大切なポイントは何ですか?